新人歓迎会を兼ねた飲み会が開かれたのは、次の日だった。

私はこの日で無事に12連勤を終えようとしていた。
体はボロボロだけど、心は解放感でいっぱい。連勤の最終日は気持ちが昂揚して、ものすごく頑張れる。不思議な力が発揮される。今日はミスが少ない。今のところ武田さんのお怒りも買っていないない。

なのに。

「高畑、忘れているかもしれないが、今夜は飲み会だ」

武田さんは浮かれている私に悲しい通告をした。

げ、嘘でしょ
早く家に帰って寝よう。とにかく泥のように眠ろう。風呂なんか後回しでとにかくベッドにダイブしよう、と思っていたのに。

「すみませんが、不参加です。疲れてるので。12連勤よく頑張りましたよね、私」

「20時半に"赤提灯"という居酒屋だ。場所が分からなければ寮まで迎えに行く」

「聞いてます!? 」

武田さんは私の言ったことを、完全にスルーして要件のみを伝えてくる。

「お前は強制参加だ。今日はフロントのメンバーも呼んで、GWの慰労会を兼ねた新人歓迎会をする。必ず参加するように」

「いやだから帰って寝たいんで」

そう言って断ろうとすると、鬼上司はギロっと殺気立った目でこちらを睨みつけた。

あー。面倒臭いなぁ。
この人は飲み会も仕事のうちとか思ってるタイプなんだよな。飲みニケーション?的な。あぁ。古い。考えが古すぎる。なんたって今は令和だ。
職場の飲み会?それ必要ですか?
楽しくもないお酒の席に半強制的に同行させられて、その上自腹だ。自腹。
しかも下っ端は、気を配ったり、皿を配ったりしないといけない。私にそんなこと出来るはずがない。
親睦を深めるのが業務の一環だというなら、飲み代は経費で出すべきだし、なんなら時給も発生させるべきだと思う。
だからそんな不毛な飲み会の誘いは、胸を張って断るぞ、私は。