「クレームの報告書も溜まっているぞ」
更に追い討ちをかけられて、盛大にため息が漏れる。
振り返れば、このゴールデンウィークは悲惨な毎日だった。
レストランでは、お客さんにドリンクをぶちまけた上に、その人より先に、床を拭いてしまったので「客より、床の方が大切なのか!」とブチ切れられた。ちょっと慌ててしまっただけなのに。
他には、女子大浴場の施錠を頼まれたとき、まだ利用者がいたのに、そのまま鍵を閉めてしまった。
ほどなくして「緊急ボタン」が鳴り、慌てて鍵を開けに行くと、閉じ込められていたオバちゃんが素っ裸のまま大激怒。
宿泊代をタダにするまで許してくれなかった。
ちゃんと確認したつもりだったのに……お客さんがお湯の中に潜って隠れていたとしか思えない。
ヤギちゃんと沙耶にそれらを話したら、「まるでコントねぇ〜」とかいって笑われたが、笑い事ではない。
その他諸々、ここ数日はクレームの連続だった。その度に、武田さんが助けてくれた。彼がいなければ、私は今頃クビになっていただろう。
「言い忘れていたが、今朝早く、鈴木様がチェックアウトされた。高畑にもよろしく伝えてくように言われたぞ。言いすぎて悪かった、と」
「はぁ、やっと帰ったんですね」
それを聞いて、私は心底ほっとした。