しかし。

現在財布の中身は、たったの35円。これじゃ何も買えない。このまま店内に足を踏み入れたりしたら、生き地獄同然だ。

「全然、欲しいものとか、無いんで!!ほんとに、大丈夫です!!」

半ば投げやり気味だった。

「……そうか。すぐ戻ってくるから待っててくれ」

「はい……」

ああ、私は辛い。

泣きたい気持ちで待っていると、数分で武田さんがコンビニから出てきた。その手には、レジ袋が3つ。そして運転席に座るなり、その内の2つを私の目の前に差し出してきた。

「ほら。持って帰れ」

「ええ……!?くれるんですか!?」

「あぁ。腹、減っているんだろう」

「そりゃもうペコペコです! って、なんで分かったんですか!?」

「高畑が自分で お腹すいた と口にしていたからだ。19時頃からずっと」

げえええー!まじか。無意識だった……

データ入力で無心になってたからか、心の声が知らぬ間に出てしまっていたらしい。

「す、すみません」

「お前のことだ。財布でも忘れたんだろう」

「よく分かっていらっしゃる……」

いや、正確には、財布はある。所持金が無いだけだ。
しかし、35円しか持っていないなんて、さすがに恥ずかしくて言えないので、そういうことにしておいた。