武田さんは腕組みしながら、私のデスクをジロジロと見てくる。無駄に身長が高いので、威圧感がすごい。

「おい、少しは片付けたらどうだ」

彼は粗探しをするのが趣味らしい。

私は「はぁ」と言いながら自分のデスクを、しげしげと眺めた。

……確かに、荒れ散らかっている。

パソコンの横には、料金表や、近隣施設の資料が山積みになって崩れかけているし、ペン立てには、壊れたシャーペン、インクの出なくなったボールペン、カスカスになったマーカーペン……などなど、もはや使い道のない物まで入ったまんまだ。

電話機やパソコンには、薄くホコリが被っているし、いつ書いたかわからないようなメモ紙が沢山貼り付けてある。

片付けろ、と言われても、これではどこから手をつけて良いのか分からない。
整理整頓は大の苦手だ。全く、やる気が出ない。

どうしようかと途方に暮れていると、武田さんは無言で、この荒れたデスクを片付け始めた。


「ちょ、ちょ、触らないでくださいよ!」

「自分で出来ないのなら、俺が片付けてやる」

「ちょっと、あっ」

「おい、なぜここにファッション雑誌があるんだ」

武田さんは「JJ」を手に凄む。
以前、同期の沙耶が「少しは女子力を磨け」と言って渡してきたやつだ。1ページも読んでいないけど。


「ちょっと、やめてくださいよ」

「デスクの乱れは、心の乱れだ」

「セ、セクハラで訴えますよ!」

「おい、なぜこんなところに飴玉が転がっているんだ!!」

「それは糖分補給に……って! 捨てないでくださいよ!」

「全く!業務に関係ないものばかりじゃないか!」

「もう勘弁してくださ~い……」


武田さんってほんとに仕事が早い。
ものの5分で、荒れ散らかったデスクを綺麗に片付けてしまうんだから。


「これで集中できるだろう」

「……ハイ、アリガトウゴザイマス」

「もうすぐ新入社員が入ってくる。高畑も一応 先輩 という立場になるんだから、それなりの自覚を持て」


武田さんはそう言って、自分の席に戻った。