「「「「「お疲れ様でした」」」」」
18時きっかり。今日入社したばかりの新入社員達が、事務所で挨拶をしていた。最初の1週間は簡単な研修らしい。
新入社員は女の子が3人、男の子が2人。
そんなフレッシュな新入社員たちを見て、隣のデスクに座るパートさん(主婦の中山さん)が
「何人残ると思う?」
と、ニヤニヤしながら私に声をかけてきた。
「1年後には3人ですね」
私は一丁前に肩をすくめながら答えた。
実際、私の同期はこの1年で半分になってしまった。
激務だし、その割に給料は安いし、先輩は怖い人ばっかりだし、皆嫌になって辞めていってしまった。
「私ね、去年あなた達が入社してきたとき、高畑さんが一番最初に辞めると思ってたの」
「何気に失礼ですね」
「ふふふ。高畑さん、意外と根性あるわよね」
「そうですかね?やる気が無いだけですよ。じゃ、そろそろ上がりまーす」
仕事はまだ残っていたけれど、残業しだすとキリがないので、新入社員に紛れてタイムカードを切った。
中山さんは、やれやれといった様子で「お疲れ様」と笑っていた。
会議中の武田さんが戻ってくる前に、素早く帰らないと。
私は鬼上司に見つからないよう、忍者のように身を隠しながら一目散に帰った。