子供が遊んでいたり、家族でピクニックをしていても不思議じゃない丘がそこにあるだけだった。


「お供え物とか、持ってきた方がいいのかな」


丘を眺めていた理子がそう言った。


「そうだな。ここで沢山の人が亡くなったなら、それなりに供養したほうがいいのかもしれないな」


腕組みをして丘を見つめていた渉が、そう答えた。


「あたしたち、土足で丘に踏みこんじゃったんだもんね」


あたしはそう言った。


ここで亡くなっていった人たちの気持ちなんて、なにも考えていない行為だったのだ。


今更ながら、後悔が湧き上がって来る。


あたしたちは丘へ向けて一度手を合わせると、すぐに街へと移動を始めた。


善は急げだ。


近くのスーパーで花を買い、お供えようのお団子も買った。


これだけで事態が収束するとは思えなかったけれど、とにかく何かをしていたかった。


それで自分の気が紛れたのだ。