「俺のこと本当に分からないの?」



「はい、ごめんなさい。」



男の子があまりにも悲しそうにあたしを見るから、あたしは俯いてしまった。



「柚が謝ることじゃないよ。」



男の子は優しく笑ってあたしの頭をなでた。



「俺、空って言うんだ。改めてよろしくな?ってなんか変な感じだわ。」



あたしは俯いていた顔をあげた。



「空くん?」




そう名前を呼ぶと一瞬悲しそうな顔をした。




「おう、ちなみにおまえは山下柚香だからな!」



柚じゃなくて柚香なんだ…。



「あたしより空くんの方があたしのこと知ってるね!」



「まあな!」




「本当は自分のことは自分が一番知ってるハズなのに…。」



「そんな悲しそうな顔すんな!おまえの忘れてることは俺が覚えてっから、なっ?」



ありがとう、空くん。




「ありがとう。」




気がつけば暖かい何かが目からこぼれ落ちていた。