あの時、風見さんはとても好印象だった。
お詫びも兼ねてまたあのレストランには行きたいと思っていた。

でも、よりによってコーヒーを一気飲みしているところに
偶然再会するなんて。

あまりに酷くないでしょうか……


「あ、えっと、先日はご迷惑をお掛けしてすみませんでした」

取り敢えず、先日の一件について謝罪をする。

「全然気にしないで?あの2人、今いい感じらしいね」

「そうみたいですね。良かったです。玲奈、稲森さんのことすごく気に入ってたから……安心しました」

あの後、稲森さんから玲奈に連絡をしてくれたみたいだ。
早速デートにも行ったらしい。
2人が付き合うのも秒読みかもしれない。


「上手く行くといいね」

「ですねぇ」


ちなみに、風見さんの事は玲奈からさりげなく聞いていた。(言わずもがな、情報源は稲森さんだ)

私より3つ歳上の、24歳。あのレストランで正社員として働いているらしい。
ちなみに彼女はなし。


「有希ちゃん、って呼んでいいかな?」

風見さんは言った。

名前を知られていることに驚きつつ「も、勿論」と答える。
彼は「稲森から聞いたんだ」とはにかんだ。

きゅん……。

私が風見さんの情報を 玲奈を通して収集していたように、
彼もまた私のことを稲森さんから聞いていたのだと思うと、嬉しくなった。

玲奈と稲森さんが仲良くなったのと同時に、私たちにも緩い繋がりが出来ていたみたい。


「あ、そうだ。有希ちゃん、良かったら連絡先教えてくれない?」

「え!?喜んで!」

私はスマートフォンを片手に、無意識にそう答えていた。