[市立椎葉中学校]と書かれた表札が書かれた門を抜けゆるい坂を登るとそこには薄暗い中電気のついた体育館がある。中からは微かに喋り声が聞こえていた。

ガラーッと思いっきり扉を開けると一斉に静まりかえった後、中にいた皆がこちらに注目し「おはようございます」と大きな声が飛び交う。体育館の中は一番奥にステージがあり、その手前には女子がコートの真ん中にネットをはり終わっている。そうしてもう一面の開けた扉の目の前のコートには男子がネットをはり終えようとしている姿があった。


「じゃ、朝練頑張ってね」
横にいたアユが奥のコートへ一人歩き出したと一緒に俺らは右へ曲がり、男子専用更衣室へと足を進めた。




「今日だよな、明日の練習試合のメンバー発表」
着替えている中唐突にマサヤが口を開く。俺はそういえばそうだったななんて思いながら着替えを続けていた。

「って言っても、いつもと変わらないんじゃねー?中体連近いしさ」
「マサヤとハルのセットも変わらねぇのかね?」
更衣室に先に来ていたメンバーの言葉らに耳を傾けていたことに気づく。その証拠に彼らの言葉で着替えていた手がピタッと止まっていた。

「当たり前だろ!俺とハルは最強ペアなんだし、なっハル」
マサヤはこちらにニカッと笑みを浮かべ同意を求めてきた。その言葉がグサッと心に突き刺さる。なんとも言えない気持ちだったのを隠しながらうんと俺は頷いた。


椎葉中学校男子バレーボール部。俺とマサヤが所属する部活だ。椎葉中学校では体育館はひとつしかなく、バスケとバレーで曜日ごとに分けて練習する。月曜日は朝の練習は禁止されており、放課後はステージ側コートがバレー、手前のコートがバスケとなる。そして火曜と木曜は朝練は外での練習のみになり放課後が体育館で練習。水曜金曜は朝練が体育館を使用でき、放課後は外での練習となっていた。

そして今日は金曜日であるため朝しか体育館を使えないということは、監督が来たらすぐ練習試合のメンバーの発表であるだろうとハルも他部員も予想していたのだ。





「集合!」
体育館内で響く大きい声のもとへ俺も含め、男子は皆が集まる。そこには体育館内に入ってきた監督の姿もあった。例というキャプテンの号令がかかる。
「「おはようございます!」」

「はい、おはようございます。早速だが、明日の練習試合スターティングメンバーを発表します。キャプテン皆川、副キャプテン真田、セッター矢崎、神代、相島、浜野、神代のリベロで向坂、以上です。が、1年生も含め皆が試合に出る機会があるわけで、自分も試合に出る気で練習にとりくんでください。解散!」

監督がコートの端に置いてある椅子に腰掛けたとこで部員全員二列になって毎回やっているアップのためコートをキャプテンの掛け声に合わせながらランニングを始めた。


“神代のリベロ向坂”そう皆から認知されているのが俺だ。守護専門リベロ···そのポジションに不服があるわけでもないし、最初この位置に任命されたときは不満もあったが今では誇りに思っている···はずなのに心のどこかに突っかかるものを拭えずにいた。