「それと、昨日、バイトが休みで、ファミレスに行って、それからなんとなく散歩をしていたら、近くの川で釣りをしているおじさんと出会って、人生初の釣りをしました。魚が針にかかるまでの間、じっと待っているのが苦にならない私は、おばあちゃんなんでしょうか……。」



知らねえーよ。何をムルソーさんに訊いてるんだろう、委ねているんだろう……。



「ムルソーさんも釣りはしますか? というか、したことありますか? もしよかったら、一緒に……。」



ここまで言って、まずい! と思った。私はムルソーさんと会っちゃいけないし、ムルソーさんだって私なんかと会いたくないに決まってる。会いたかったら、きっと私が帰る時間を計算して、家の中か、家の外で待っているはずだ。そうしないってことは、私のことをまだ信用できていないのか、ムルソーさんの望みはそんなことじゃないのかのどっちかだ。



「何でもないです。忘れてください。」



って言われると、人間、忘れられなくなっちゃうんだよね……。



「そういえば、バイト先で、気持ち悪い先輩がいるんです。佐藤さんっていう、24歳のフリーターなんですけど、やたら自分の自慢話ばっかりしてきて、ホントキモイんです。過去の栄光を自分でベラベラ話す人ほど醜いものはないと、ムルソーさんは思いませんか?」



やっばっ。佐藤さんの名前出しちゃったよ……まあいっか。ホントのことだし。