とりあえず寛太の好きな人奪っちゃえ的な。チャラチャラしてやるぜ的な。 いや、先輩はそういうタイプじゃないと思うけど。 「追い掛けねぇの?」 「え?」 「あいつ、追い掛けなくていいのか?」 「うん」 「…………」 「追わないよ」 「そうか」 寛太は深く溜息をついて空を見上げた。 鉛色だ。今にも雨が降り出しそう。 でも青空よりはいいかもしれない。こっちのほうが私の心に似てて。