涙でぼやける視界の中にいる先輩が、静かに音を立てながら私に近づく。



その大きな手を私の頭に乗せる。
後頭部に温もりが広がる感じがした。




「ナツメ。寛太と幸せになんだぞ」



それだけ言い残して私の横を通り過ぎていく。



温もりは、もう、ない。




「廣瀬……」



寛太の小さな声が聞こえる。




『寛太と幸せになんだぞ』



それは、私が寛太と付き合う前提?