「……は?」 「わりぃ。好きになっちまった」 鈴虫が心地よく鳴く、夜の日のことだった。 そんな鈴虫の声さえも、俺を壊していくようで。 「ちょ……っと待てよ。何言ってんだよ」 「……寛太、お前にはマジで悪いけど、ナツメのこと好きになってた」 そういう爽夜の目は揺るがない。 申し訳なさそうな色を含んだ目ではあるが、すんげえ鋭い。 もう前からこうなることを予測していたように、俺の目の前の奴は落ち着いていた。