気付いたら駆け出していた私。




後ろで逃げた私を呼び止める声が聞こえたけど、無視して扉を開ける。



バタンと大きな音を立てて閉まる玄関の扉は、いつもより重かった。





あんな現場を見てしまった私は、もうどうすることもできない。



そのままズルズルと座り込んで、胸に手を当てる。




ドクン、ドクン……呼吸を整えて、涙が零れないようにと上を向く。




視界に入ったのは、青い空でもなければ、夕焼けに染まるオレンジ色でもない。


薄暗い、白の天井。