side:愛悠
ふうーっ。
母が作ってくれてココアを1口飲み、机に置く。

「亜希くん、もう見てくれたかなあ」

あの時はこれしか道がなかったから、ついあんな怪しげな男の人に亜希くんへの手紙を渡してしまったけど、
それが正しい選択だったのかどうか、いまごろ不安になってくる。

…届いていてほしい。

もうきっと、これが最後の方法だったから。

あの手紙が亜希くんのもとに届いてくれるのなら、もう何も望まない。

手紙に、すべてを託した。

あとは、あの男の人の言葉を信じるしかないのだ。


『僕があなたの想いを届けます。
あなたは、ありのままの気持ちを
手紙に…言葉に変えて、僕に渡してください。
必ず、届けます。
あ、そうそう。
一応、ふつうの郵便と同じように、相手の方の住所と名前もお願いしますね』

最初は、こんな話、信じられないと思った。

でも、もしこれが最初で最後のチャンスなら。
そう思うと、試すしか道はなかった。

「おねがいします。
彼に…、亜希くんに、これを届けて!!」

そう言って手紙を男に渡した時、男が見せた笑顔は、とてもあどけなかった。

もしかしたら、私とそう歳の変わらない“少年”なのかもしれないと、ふと感じた。

だが、彼のまとう黒いオーラは、はかりしれないくらい深いものだとも、同時に感じた。

『もちろん。』

その言葉には、不思議な説得力があった。

「さあて…どうしよっかな」

何かをやる気も起きず、かといって、ずーっとぼおっとしてるのも少し苦痛なので、何かしようと思い、立ち上がった。

その時、家のポストに、何かが届いた音がした。