思えばもうずっと、
心は15歳のままだったのだ。

銀行口座の振込も、
ラムネのふたを開けることも、
地下鉄の乗り換えも、
タイピングのショートカットも、
一人で牛丼を食べることも、
高いヒールで歩くことも、
目を閉じてキスすることも、

何でもできる大人なのに。

あの日から何も変わってはいない。
何年経っても、消えたりはしない。

なのにどんどんずるく、かしこく、
私の振る舞いは大人になっていく。

やっと同じ立ち位置に来たのだ。
もう彼の背中を見つめるだけの生徒ではない。

もう一度、彼の瞳に映るために。
もう一度、彼に頭を撫でてもらうために。

それだけでいい。
それだけでいいって思っているのに。

欲深い大人は、「それ以上」を欲しがる。
私を特別な存在にしてほしくて。


波の音が、潮の香りが
彼を忘れさせてはくれない


これは、私の物語。
私の、長い長い片思いとたくさんの誤り。