西野メンタルクリニックの院長でもあり、「B.C. square TOKYO」に入っているクリニックの先生たちの中でダントツの人気を誇るのがこの人・西野一真先生。


30代の中盤位の年齢だって噂なのに、どう見ても20代にしか見えないし…何なら10代でも通ってしまいそうな可愛らしさと、色素薄い瞳と微笑んだ時にくるんと上がる口元が特徴的で。


メンタルクリニック…っていう仕事柄なのか、とにかく人と仲良くなるのが早くて上手いし、子供だろうが年上だろうが敬語で話しつつも鋭い発言をするのも彼の魅力で。


管理人の癒しの田中さんと仲良しなのか、2人で良く一緒にいるから「あの2人はセット」という認識をされていて、「B.C. square TOKYO」でも名物となっている先生だ。




「前からツイてない子だと思ってはいたけど…まさかここまでとはねぇ…」

「な、んで、西野先生も…」

「待った、話の続きは後で…悟くん」

「……ほいよ」




西野先生に気を撮られている間に、両手は柔らかい布のような物で縛られてしまっていて。
あっ…と思っている間に、ほわほわ微笑む田中さんに猿ぐつわまでされてしまっていて。


完全に頭も体もフリーズしてしまった私を、よいしょ…と米俵のように肩に担いだのは、やっぱり田中さんで。




「大人しくしててね~」




気の抜けたような言い方のまま、先に歩く坂井さんと西野先生の後をついて歩いたその先には、私が使って上がってきた、管理人室横への直通エレベーター。


その扉横にあるボタンを押すと、静かに開くエレベーター。


何の言葉も発せず乗り込んだ坂井さんと西野先生に続いて、私を担いだ田中さんがエレベーターに入ったのを確認すると、坂井さんは胸についているポケットのジッパーを開いて、そこからカードキーを取り出した。


そのカードを「B5F」と「R」の上にあるスペースにかざせば、ピッ…という音に続いてカチャ…とその場所が開いた。




「おれらのアジトにご招待だな」

「アナタのせいでしょ…ったく…」

「ホント余計な事をしてくれますよね…警戒心薄いのも程がありますよ、何考えてんすかおじさん」




カチャ…と開いた先には。


「52」のボタン。