「三上ちゃんさぁ~、おれらの事、誰にもなぁんにも言わねえって約束、できる?」




そう言って私の目の前でホワホワとした柔らかい微笑みを浮かべたまま、頭をゆらゆらと左右にゆっくり揺らしている岡部さんだけは、いつもの私が知っている彼の雰囲気のままで。


その雰囲気に安心したからか……それ自体が私を誘導する作為的なモノだという事に気付きもせず……何とか打開策は無いか、どうにか言葉を発する事が出来るようにならないかとばかり考えていて。


ブンブンと全力で首を上下に振って、彼の提案を受け入れるという事を態度でも示してみたものの……岡部さん以外の4人から注がれているのは違った視線だった。




「申し訳ないけど俺は信用しないよ?言葉だけならいくらでも言えるからね」

「ワタシも修ちゃんと一緒かな?誓約書とか念書なんか作っても安心できるような世の中じゃありませんからね」




手を広げて親指と中指で眼鏡を直した坂井さんは、そのレンズの向こう側から見えるくっきりとした二重の瞳は猛禽類の様な鋭さを携えていて。


カウンターテーブルに寄り掛かっている西野先生は、器用にスマホを操作しながら私の方をチラリとも見ない様子は、本気で興味が無さそうで。




「じゃあ……オレらが安心してこれまで通り行動できるように何か方法でも考えないとダメだね~」

「あ、そうなの?三上ちゃん……だっけ?割と可愛いしさ、この際だから俺らの傍に置いとけば良いんじゃない?」




私が座らされているソファの肘置きに腰掛けた麻生さんは、これから楽しいゲームを始めようとしている子供みたいな無邪気な笑顔を見せて。


うけけ……と、こちらも無邪気な子供みたいな笑顔を見せて、向かい側のソファに腰掛けた町田さんは組んだ長い脚を惜しげもなく披露していて。




「……だって?まぁ、諦めな?」




ぽんぽん……と、私の頭を優しく撫でている岡部さんは、彼らの言葉を聞いてもその表情を変える事は無くて、まるで彼らがそう答えるのを知っていたかのように微笑んでいて……。




「……むぐっ」

「さぁて、どうすっかなぁ~」




私に話し掛けるために折っていた腰を戻すように、全身で伸びをしてから、顔だけをチラリと横に向けて坂井さんと視線を合わせて口角を上げたんだ……。