カツカツ……と靴音を鳴らしながら、もごもごとソファの上で体を捩る私に近寄ってきたのは、相変わらず犯人みたいな冷たい瞳をした坂井さんで。


私を縛っているモノやら猿ぐつわやらを外してくれるような素振りも無く、スッと田中さ……じゃなかった、岡部さんの横にヤンキーのように屈んで私に鋭い視線を向けていた。




「見られちゃったからにはさ……そのまま放置したりもできないんだよね、俺達としては。黙っといてね……って口約束も信じないタイプなんだ、俺」

「修ちゃんだけじゃないよ、ワタシもですからね?」

「むぐっ……んんっ……」

「三上さんがさ、吹聴して回るタイプじゃないって事は分かってるんだけどさ、それとバレる可能性を放置するっていうのは別物だと思うワケ」

「くくっ……ホント三上ちゃんってツイてないよねぇ……」

「一真……笑ってやるなよ、この子に悪気は無いんだから」




坂井さんと西野先生が私の目の前で話し始めても、岡部さんはソレを気にする……なんて事は欠片も無くて。


もごもごと動いて何とか縛られてる手だけでもどうにかしようとしている私を、相変わらず描き続けているのも異様な光景なんじゃないか……なんて、どこか冷静な頭の片隅でそんな風に考えて。




「……どうしよっか」

「三上ちゃん、放って置いたら他にもトラブル巻き込まれそうだよねぇ」

「ソレなんだよなぁ……本人意識しない所で俺らの事がバレんのも何とか防がないとさ……」

「……手元に置いとくのが無難、ってトコ?」

「誠に遺憾ながら」




きゅ……と眉間に皺を寄せた坂井さんは西野先生に、困ったように眉毛を下げた顔を向けて。


西野先生は、そんな坂井さんを見てから、自身の顎に手を当てて、何かを考えているように唇を尖らせた。




「そんなん、有明せんせーに言って、俺らのどっかに出向扱いにしてもらやぁいーじゃん」




顔も視線も上げることなく、手を動かしたままの岡部さんが、事も無げにそう言うのと同時位に、私が連れて来られた入口の方から扉が開いたような音がした。




「たっだいま~!あー!超疲れちゃったよ~、一真さぁ……毎回毎回人使い荒いんだよ!」

「それは否定しないけどさ……お前もお前で毎回豪快に動き過ぎなんだよ、何時かバレんぞ?」




わぁわぁと賑やかに入ってきたのは2人の男性で……残念ながら、そのどちらにも私は見覚えがあって……。