……よ、予告状とか……アジト、とか……。


もしかしなくても、私、かなりヤバイ状況だよね……。




「……どうします?」

「ポリシーに反する事はしたくないな……」

「……んふふっ」




すい…と私から視線を逸らした西野先生は、カウンターバーらしき場所でグラスを傾けながら難しい顔をしている坂井さんの所に近寄っていって。


田中さんは、そんな2人の会話に混ざらず、尚も私の目の前でふにゃふにゃと楽しそうに微笑んでいる。




「修ちゃん、ポリシーも分かるけどさ…まずは俺らの事が漏れる方がマズいんじゃないの?」

「そうなんだよね…あの子がどこまで気付いてるか…っていうのが問題だろうな」

「んふふっ……縛られんのってどんなかんじ?」




坂井さんは頭をフル回転させているのか、メディアの討論などでも見掛けた事のある仕草…指で自分の唇をゆるゆると撫でていて。


西野先生は、全員が視界に入る場所に移動すると、壁に凭れて腕を組んで、私に見下ろすような視線を向けて。


田中さんは、私の両手を解放するでもなく、猿ぐつわを外すでもなく、若干震え始めた私を観察して楽しそうに微笑む。




「……それより、あいつらに連絡」

「……オッケー……はぁ……ワタシ、あの人達も心配でならないんですけど、戻ってくるまでに何か方法考えておかないと」

「……それは俺も同意」

「ねぇねぇ、コレ、外して欲しい?」




……あ、あいつら!?


何!?まだ誰か来るの!?


そんな私の考えた伝わってしまったのか、西野先生は可愛いフェイスを歪ませながら超特大の舌打ちをした。




「目隠しもしときます?」

「ソレ多分無駄」

「……なんでよ」

「一真の事、声で気付いてたみたい」

「……マジか」

「だから、目隠ししたところであいつらの声聞けば、この子誰だか気付くと思う」




……き、気付かれてる……。


冷静に状況を分析する事なんて、坂井さんからしてみれば小学生の算数をやる位に簡単なモノだろうし、それを瞬間的に飲み込む西野先生も同じ位に凄い…。




「心配しなくても、いーやつらだから」




田中さんは相変わらず、ほにゃほにゃ笑って…私を安心させるかのように、子供にやるように頭を撫でた。