私は昼休みに隣の席の高本に話しかけた。

「今日の放課後体育館前に来て」

高本はちょっと驚いた顔をして笑った。

「なに、俺リンチでもされんの」
「なに寝ぼけたこと言ってんのよ」

リンチというか、いじられの最高潮みたいなもんだな、と心の中で言った。

「まあ暇だからいいけど」
「ありがと、期待してて」
「やっぱり怪しいわ」

そのとき隣のクラスの紗奈に呼ばれた。
私は高本に向けてバーカと口パクをして彩羽の元へ向かった。



彩羽は開口一番、高本のことについて聞いてきた。

「高本にコクるんでしょ?今まで高本が好きなんて話、真美から聞いたこともなかったからびっくりした」
「え、嘘!そんな風に伝わってんの?」
「コクると言ったらそんな風もこんな風もこれしかないでしょ。」

(やっぱりなんか勘違いされてたのか)

みんなにそれで伝わってると考えたらちょっと気分が悪くなった。
撤回しようと思ったけどやめた。
騙すならそっちのほうが最後までバレないかな、と思って彩羽の言葉を放置した。
すると彩羽の顔が一瞬歪んですぐに笑顔になった。

「真美が人のこと好きになるなんて…。驚きもあるけど嬉しい」
「意味わかんないし、どの立場でもの語ってるのよ」
「うーん、親友?」

親友という言葉にドキッとした。
私は友達は「友達」としか見ていないから「親友」というカテゴリが脳内になかった。
でも否定したら気の毒だから「うん、わかった」と言った。

やっぱり私は特定の個人を「特別」として扱うのに向いていないのかもしれない。