「ごめんねぇ?そうだよ、私はその子をいじめてた。」
女の子は驚く。きっと、こんなこと言うと思わなかったんだね。
「分かった。皆の言うとおり、姫やめるね?今までありがとうございました。」
倉庫を出る前に『一時の迷いは、すべてを壊す。』そう小さく呟いた。
人は信じちゃいけないもの。
次の日・・・。
皆が遠巻きに私を見て、こそこそ話している。
「おい、お前。」
・・・こいつら、私をいじめてたやつらじゃん。
「・・・狂歌に捨てられたんだってな!はっ!ざまぁ。」
狂歌に捨てられた・・・。
ていうか、もう隠さなくてもいいんだよね?
私はそいつらにニッコリ笑顔を向ける。
「誰にそんな口聞いてるの?」
「は?」
「私は・・・蝶華だよ?」
最後は声をうんと低くして。
回りにいる人たちも驚いている。
「嘘ついてんじゃねぇよ!!」
嘘。ね・・・。
「嘘じゃないよ。」
「咲さん!?何でここに・・・。」
「何でって、この学校に通ってるからでしょ。」
「あ、そうですね。」
確かにそうだね。
「瑠璃。来て。」
「あ、はい。」
咲さんに手を引かれ、屋上に行く。
屋上には、歌桜の皆が全員いた。
「さて、説明してもらおうか?」
きっと、狂歌のことだろう。
「・・・ハイ。」
私は、狂歌の人たちの間に起きた出来事を全て話した。
歌桜は心のそこからは信用してないけど、少し信頼しているから。
「・・・そんなことが。」
「っ!辛かったね!大丈夫、俺らがいるよ。」
「っ・・・。大丈夫ですよ。あっちには、新しい姫がいる。だからきっと、大丈夫です。」
あえて、あいつらのことを話してあげた。
私は・・・、心配される必要なんかない。
~歌桜 side~
次の日、俺らはまた、屋上に集まった。
「・・・咲、本当に瑠璃、大丈夫だと思うか?」
「大丈夫なわけないだろ。」
「だよな。」
沈黙が少し続く。
「・・・狂歌に話聞いて見るか?」
「あぁ。」
俺らが屋上を出ようとしたとき、
「あれ?瑠璃?」
奏が下を見て、呟く。
奏の言ったとおり、瑠璃がいた。でも、ボロボロだ。
「・・・組潰しの蝶華。」
「行くぞ。」
瑠璃の教室に急いだ。
瑠璃・・・最初会ったときみたいな暗い目。
光が差していない。
どうしたら、瑠璃を救える?俺らは、どうすればいい?
~狂歌 side~
俺らは教室の自分の席に座っている。
姫の『美憂』は隣のクラス。
「瑠璃ちゃん、本当に裏切ったのかな?」
「写真があるんだ。決定的しょうこだろ。」
・・・俺らはまだ、瑠璃のことを少し信じている。
その時だった。
―――――ガラッ!
教室のドアがあき、ボロボロの瑠璃が入ってきた。
「・・・どうしたんでしょう、あれ。」
「瑠璃!!」
空いてるドアから歌桜が飛び込んできた。
「皆さん、どうしたんですか?」
歌桜は焦っているのに、瑠璃は平然としてる。
「お前、きのうどこにいた。」
「きのう?きのうは・・・組を潰してましたよ。」
――――ザワッ!
教室内がざわつく。隣のクラスの奴等も見に来ている。
「どこのだよ!?」
「どこ?んー、確か、椿鬼奴だったかな?」
「な!?椿鬼奴って、世界No.3のところじゃねぇか!」
「はっ?」
世界No.3?
そこを一人で潰したのか?
「んで、そんな無茶すんだよ!瑠璃、お前は、蝶華である前に、一人の女の子なんだぞ!」
「・・・何ですかそれ?一人の女の子?そんなもの関係ないですよ。私は・・・性別なんて要らないし、心配される必要もない。歌桜の皆さんが、邪魔をするならば、私は歌桜を潰します。」
「っ!」
もう、俺らが知ってる瑠璃じゃない。
俺らが、消したんだ。
瑠璃が出ていったあと、歌桜が俺らの所に来た。
「お前ら、本当にあいつが裏切ったって思ってんのか?」
「・・・。」
俺らは答えない。いや、答えられない。
「迷ったんです。」
「っ・・・やっぱりか。」
「お前らは、蝶華の口癖知ってるか?」
「瑠璃ちゃんの口癖・・・?」
知らない。聞いたこともなかった。
「あいつの口癖はな、『一時の楽園はすぐに崩れ落ちる。』『一時の迷いは全てを壊す。』なんだ。」
「!!」
確かに俺は聞いた。あいつが倉庫を出る前に『一時の迷いは全てを壊す。』と言っていたのを。
「・・・お前らなら、瑠璃を救えると思ったのにな。」
もし・・・、もし瑠璃が裏切ってなかったら、俺らは、最低なことをした。
タイムリミット