私は週末実家に戻り、有美を呼び出す事にした。


 地元の賑わった居酒屋の奥に、私と有美は席をとった。
 生ビールに、焼き鳥やらのつまみが並ぶ。

 有美とはグアム以来メールでのやり取りだけだったので、久しぶりの再会に気持ちも弾むのだが……


「ところで話って何? わざわざ戻ってくるくらいなんだから、よっぽど面白い話なんでしょうね?」

 こんな風におどけて言うのが、有美の面白いところで私は好きだ。


「うん。結構大変な事態かも?」


「何、なに?」


「来月留学決めたけどさ、プロポーズされちゃって」


「え―。 誰に?」


「銀行員」


「ちょと、もっと詳しく教えてよ」

「ああ、英会話教えてくれてた人よ」


「なるほどね……」


「なるほどねって?」

「だって、ただで英会話教えてくれるうえに、コーヒーおごりでしょ? そんなの下心まる見えじゃん」

「下心? ただの良い人かと思っていたけど」

「バカじゃないの。普通そんな事あるわけないじゃん。きっと好きな子からお金なんて貰いたくなかったんだよ」

「そうなのかな?」
 私は焼き鳥の串をいじりながら言った。


「そうだよ。なんか、誠実そうな人だな…… 他に何かなかったの?」

「う―ん。課長に裏切られて、突っ立ってたらマフラー買って来てくれた」

「何それ、凄いあり得ないんだけど……」

「寒そうに見えたんだねぇ」


「違うでしょ! 夏樹の切なそうな顔見て、なんとかしなくちゃって必死だったんじゃないの」


「え―。でも、仕事が上手く行ったからだって言っていたもん」


「そんなの口実に決まっているじゃん」
 有美はビールをぐ―っと飲んで言った。


「そうだったのかな?」


「絶対そう。今までの彼の事、思い出してみなよ。全部が夏樹の事を想ってだとしたらどうなのよ?」


「私の事を想って?」