「雨宮さんは、もし相手が自分の理想と違ったらどう?」
 神谷が何故か深い質問をしてきた。


「そりゃ、優しそうな人だと思ったら、お金騙しとったり、真面目そうな人だと思ったら、暴力的だったりとかは嫌ですけど……」

 当たり前の事だが、そういう人だって世の中沢山いる……


「そんなの当たり前です」
 彼はきっぱりと言いた。

 その言葉に私は、この人はそんな人では無いと思ったら笑えてきてしまった。
 多分、彼の真剣な目が嘘では無いと分かったから……


「でも、怖い人かな? と思ったら、子供や年寄に優しかったり、格好良くてクールな人が、家でテレビ見て大笑いしたりしたら、なんか胸がキューン、ってなっちゃいますけど……」
 私は酔いもまわってつい言ってしまい、恥ずかしくなり頬に手を当てた。


「それじゃあ、見た目は頼り無くて目立たない人が、実はバリバリ仕事出来る優秀な人だったらどうですか?」
 神谷さんが又、深い質問してきた。


「そういう人良いですよね! もっと言えば、好きな人の為には強くなれるとか? 最高! ドラマの世界ですかね?」
 と言ってしまい、わたしは美也さんと「きゃ―」っと、声を上げた。


「意外に近くに居たりするかもしれませんよ?」
 神谷はそう言って彼を見たが、私は特に気にもしなかった。


 私は楽しくて、ついお酒が進んでしまった。


 あっという間に時間は過ぎてしまい、会計となった。


「ごちそう様です」
 神谷さんが彼に頭を下げた。


「おう!」
 彼は伝票を持って会計に向ってしまい、私は慌てて後を追い掛けた。

 さすがに二度も続けて奢ってもらうのはまずい……


「私も払います」


「いいの、いいの。先輩は今日おごる約束なんですから……」


「でも、私は……」


「いいよ」
 彼は私に微笑んだ。

 その姿が大人の男の余裕に見えて甘えてしまった。


「すみません。じゃあ、二次会は割り勘でお願いします」
 私はそう言うのが精一杯だった。


 彼の顔が嬉しそうに明るくなった気がする。

 そうだよね… 
 二次会も奢らされるのは嫌だよなぁ、と私は彼の気持ちとは全く違う予想をしていた。

       (海原健人の気持ちは『恋愛預金満期日』にて詳しく……)