私は人行き交う人の歩道の真ん中にいる事に気が付き、建物の脇へと移り壁にもたれかかった。


 取りあえず待っているしかない…
 
 早く帰って布団の中で泣きたい…
 
 でも、あの人何処へ行ったのだろう?


 しばらく待っていると、彼が息を切らし戻ってきた。


「すみません…… お待たせして……」


「いいえ…… どうしたんですか?」
 私は彼を見た。


「これ……」
 彼はショップの紙袋を私に差し出した。


「私に、ですか?」


「はい! 開けて見て下さい」
 彼の言葉に私は紙袋を開けた。


 紙袋の中には、真っ白なふかふかのマフラーが入っていた。


「わ―。可愛い。でも、私頂く訳には……」


「いいんです。首が寒いっておっしゃってなので…… とにかく巻いて見て下さい」

 彼は無理やり私の手にした白いマフラーを奪い首に巻いてくれた。


 ドラマのワンシーンみたいにカッコいいわけで無く、どちらかというと、幼いころ寒く無いようにおじいちゃんが巻きつけてくれた時みたいな感じだった。


 この人、本当に寒くないようにと思ってくれたみたいだ。


「暖かい……」
  私は思わず口から毀れてしまった。

  いや、寒い事にも気付いて居なかったのだ。


「やっぱり、白が似合う。僕のセンスですみません……」


「そんな…… 本当に頂いていいですか?」


「はい、勿論。その為に買って来たんですから……」


「ありがとうございます」
  今の私には暖かくて……


「あの…… 夕食一緒に食べて頂けませんか?」


「えっ」
 私は突然の事に戸惑った。


 だって私は泣きたいんだから……