「ああ。
本当にありがとな、陽葵」



「そんな、私は何も……」




私はただ、自分の気持ちをそのまま言っただけだ。



天音先輩が夢を諦める姿なんて見たくなかった。



彼がピアノを弾いている姿を見たかった。
それだけなんだから。




「俺、音大に行く」



「え?」



唐突に言われて、一瞬返事に戸惑った。




今……音大に行く、って言った?
あそこまでかたくなに拒否していた、天音先輩が?



聞き間違いだろうか。
でも胸ははやるばかりで、早く聞きたくてたまらない。




「本当ですかっ!?」



驚きすぎて声が上ずってしまった。