「『陽葵の歌声が大好き』って、お姉ちゃんが言ってくれたから。
天音先輩が『お前ならできる』って言ってくれたから」
そう告げると、先輩は驚いたように目を見開き、フッと笑う。
その仕草もやっぱり余裕そうで。
その心を乱すのは、いつだってお姉ちゃんのことに決まっている。
そんな事実は悲しいけれど、彼が今笑えているなら、私はそれで満足だ。
「私……歌手になりたい。
お姉ちゃんは応援してくれるかな」
初めて描いた夢。
歌うことが楽しいと再発見できたからこそ、夢を見られる。
学校では友達もできた。
みんなに出会えて、本当に幸せだと思える。
お母さんやお父さんとも、忙しいけれど言葉は交わすようにしている。
心の中でそう唱えて、息を吸う。



