「お願いだから……。
もう何も失いたくねーんだ……」
その訴えは、不安げで儚くて。
本当に先輩が消えてしまいそうだった。
何かを失えば、その代わり代償がある。
そんなこと抜きにしても私は先輩がいなくなってはほしくない。
大切な人がふたりも会えなくなってしまうのは、単純に嫌だ。
どうしようもなく悲しい。
言葉はぶっきらぼうなのに、私には強がっているように聞こえる。
きっと気をつかってくれているんだろう。
私がこれ以上、自分を責めないように。
意味がわからない。
彼にとって私は恨むべき存在なのに、そんな相手を許そうとするなんて。
「うっ……せん、ぱ……っ」
バカだ、本当に。
先輩は大バカだ。