「俺は……音大に行って……っ、ピアニストになりたかった……」




……それ、は。



彼が語った、その夢は。




────『私、いつか音大に行って、有名なピアニストになりたいの』



いつかお姉ちゃんが語ってくれた夢だ。




天音先輩が、夢を諦めた理由は。



もう未来を追い続けない理由は。



一緒に目指す人が、いなくなってしまったから。



応援してほしい人が、もうこの世にはいないからだ。





「ご、ごめっ……なさ……っ。
せん、ぱ……っ、ごめ、なさ……」



涙が止まらない。



私は、大切な人を苦しめることしかできない。