「先輩の夢はなんですか?」



「……は?」




彼は、意味がわからないと言いたげな顔をしている。



最近よくされる呆れ顔だ。



それもこれも、私が話題とは脈略のないことを言い出すせいだ。




「だから、天音先輩の夢を聞いているんです」



涙を隠すように、少し上から目線でそう言う。




もしも彼が “ 諦めた ” のなら、昔は夢をもっていたはずだ。



叶わなくても、叶えようと思わなくても。
その気持ちだけは忘れたらいけない。



私は、そうお姉ちゃんに教わったの。




彼の瞳が、揺れた。



それを私は見逃さなかった。