「お前を傷つけたいわけじゃないんだよ……。
それだけはわかってくれ」
わかっている。
先輩は、本当は誰よりも優しくて。
誰よりも孤独だってこと。
でもそれはきっと、ひとりを望んでいるわけじゃなくて。
誰かへの頼り方を知らないだけ。
太陽のように眩しかった、お姉ちゃんがいないから。
だからきっと、彼も追い求めることをやめたんだ。
「俺は、全てを諦めたんだ。
だから、陽葵には……陽葵だけには……夢を叶えてほしい」
陽葵だけには、だなんて。
そんな思いを受け取って夢を叶えても、幸せになんてなれない。
天音先輩が……好きな人が苦しんでいるのに。
自分だけ幸せなんて、望めるわけがない。