息が苦しくなる。



それでも、走り続ける。



もしもここで走ることを諦めてしまったら。


もう天音先輩には会えないような、そんな不吉な予感がしたから。





「ど、して……逃げるんですか……っ。
天音先輩っ!」



私が腕を掴んだのと、彼が振り返ったのは、きっと同時だった。




「……近寄るんじゃねーよ」



低い声が静かに響く。



その目は、冷たくて孤独な、寂しそうな目だった。



でも確かに、私を拒絶する言葉だ。