「日々ちゃん、相川さん、先に帰っていてくれる?」



ふたりの返事を聞く前に、私は人混みの中心に飛び込んでいた。





「天音先輩」



気づけば彼の近くへと歩みを進めていた。



彼はどこか別の場所を見ているから、表情はわからない。




「……」



返事はなかった。



なぜだか嫌な予感がする。



そう思った瞬間─────天音先輩が駆け出す。




「あっ……待ってください!」



回りの人は不思議そうな目で私を見ている。



当たり前だろう。
知らない女子がいきなり割り込んできたんだから。