でも…、俺はずっと。



「…ねぇどうして?
何であたしに、…こんなことするの?

…あたし、あたし…もう本当、辛すぎるよっ」


大きな目からポロポロと涙を零して、呼吸が乱れながらも必死に愛梨は言った。



そんな姿を見て、結局は同じようにまた泣かせてしまっている、…そんな歯がゆい感覚に強く歯を噛み合わせる。




泣き虫の癖にすぐ我慢する。

弱いくせに無理に強がる。

本当は…、



本当はずっと昔から俺の心を奪っていたのは、


コイツだけ、コイツ一人だけ。



俺は、ワイシャツの袖で愛梨の涙を拭う。



「愛梨はさぁ…誰が好きなの?」

もう泣かせたくない。


だから、聞いてしまおう。それで全てハッキリさせよう…




「い、い…

樹は…、誰が好きなの?」


最初の言葉を聞いて、一瞬だけ“いつき”と言うのかと期待した自分がいた。


しまも、逆に聞き返してんじゃんかよ。


ったく…、




「お前さぁ、なんなの?本当に…」


「分かんないよぉ…っ」


なんでコイツはこう鈍感?

キスしたのに、それでも気付かない?

感覚おかしい?




…まぁ仕方ない。





「愛梨はさ、好きじゃない奴にこういうことする?」

ジッと愛梨の瞳を見据えて、優しく唇を自らの人差し指で撫でる。