「良かったって何が?」

そう聞き返すとちょっとだけ愛梨の顔色が変わった気がした。



「あの…女の子、」

少しだけ俺から視線をずらして、言う。


「…、」



なんで?





思わず黙り込む俺。


何なんだよ…本当に、わけ分かんねぇんだよ本当。

…ムカつく、本気でムカつくよ、お前。



何でいつもそうなんだよ。




「ムカつく…」

ポロッといつもの悪い癖で思っていたことが口に出た。



「ム、ムカつくって…?」

そんな泣きそうな顔すんな、止めてよ。



「何だかんだで、振りまわされてんのは俺だよ、


…聞いたんでしょ?翔太に」



確かに俺は愛梨のことをいつも振り回してたけど、結局はいつも俺のがコイツに冷や冷やさせられてる気がする。



大体なんで翔太に聞いた時、自分のことかもって思わねぇんだよ。


「う、う…んっ」


震える声でそんなこと言われると、…男の俺としては。




「…っ!?……んっ、」

気が付けば俺は愛梨の唇を塞いでいて、


もう全てを壊してしまおうなんて考えも頭の中に横切っていた。




「…ん、っねぇ!…なんなの…!?」

愛梨が俺を突き放して、少しだけ肩で息をしながら言う。



けど、そんな考えを考えてみたところで、俺にはそんなこと出来るはずもなかった。


自分でもよく分からないけど…、



一時の感情なんだったら、そんなものいりはしなかったから。