部屋に入って、勢い良く樹はドアを閉めた。
少しの緊迫した空気が流れて…
何か言わなきゃ、
とそんなことばかり考えてしまう。
「…良かったの？」
「良かったって何が？」
と不機嫌ですと言っているような返事が返ってくる。
「あの…女の子、」
と少し視線を外しながら言う。
「…、」
すると樹は何も言わなくなって黙る。
あ、…怒ってる、？
「ムカつく…」
そんな樹から帰ってきた言葉は『ムカつく』で、あたしには何がそのムカつく、なのかが
まったくと言っていいほど分からない。
あたしに対して、…言ってんだよね？
「ム、ムカつくって…？」
少しオドオドしながらあたしは聞く。
だって怖いんだもん、樹が怒ると本当に…
「何だかんだで、振りまわされてんのは俺だよ、
…聞いたんでしょ？翔太に」
何かわけのわからないことを言ったと思うと、
次はあたしがここ最近ずっと考えていたことを言い出す。
…あたしがどれだけ、
翔太くんに言われた言葉に悩んだか。
と過去を思い出す。
