軽く会釈するお兄ちゃんに対して那月と亜子は吸い込まれていくように見入っていた。


「聞いてた以上にかっこいいじゃん!!吹季羨ましい〜」


「かっこいい…ですね」


二人がお兄ちゃんに見惚れている間に駐車場に一台の車が止まると、その中から響子さんたち夫婦が降りてくる。

そしてその後ろからさっきまで一緒にいた一人の男の人が出てきた。


「先輩…」


互いの夫婦が挨拶している後ろで微笑みながらママたちと会話している様子の先輩。


ついさっきまで一緒にいたのに、また会えた…


どこか複雑な気持ちになりつつも、先輩が自分の家にいることにドキドキしていると不意に先輩と目が合う。


先輩のところまで心臓の音が聞こえてしまいそうなほど高鳴る胸に目をそらそうとしたとき


" 久しぶり "


口パクで分かりづらかったものの、軽く微笑みながら確かに先輩はそう言った。


" お久しぶりです "


先輩と二人だけの世界にいる感覚を味わいながら口パクで返して笑い合う。そのたった30秒ほどの時間が何よりも幸せに感じた。