「あんたってほんと変わってるよね。人の心配ばっかしてさ」
「なぜか先輩のことになると大丈夫かな?とか気になっちゃうんですよね…」
「え?」
思わずサラッと出た言葉を思い出し、夜だったことに感謝して真っ赤になっていく顔がバレないように慌てて立ち上がる。
「あぁー!!そ、そういえばこれ食べませんか?最近自分の家のパンとか食べてないだろうなと思って持ってきたんです!」
持っていたことすら忘れていたケーキの箱をベンチの上で開けて広げてみるが…
「なにこれ」
「…なんで」
予想もしていなかったグチャグチャに変形した残酷なケーキの姿。
もしかしてさっき黒スーツの男の人に引っ張られたとき、振り回してしまったんだ…
ショックのあまり開いた口が塞がらずにいると
「…グフッ…!」
開いてる口の隙間から先輩がイチゴを押し込む。
「味は変わんないから。気にしなくていいよ」
自分が食べたいはずのショートケーキの上のイチゴを私の口に入れると、崩れた部分を手に取り美味しそうに食べ始める。
それにつられて負けじと箱の中にあるケーキを、先輩と取り合いになりながらもすべて平らげた。