「あっ須賀!この子今日からなんだろ?」


黒スーツの男の人は私の抵抗を気にすることなく、先輩に声をかけると再び店の中へ連れて行こうとする。


「助けて!先ぱっ…」


助けを求めようと先輩を呼ぼうとしたとき、瞬時で私の口を手で塞いで、黒スーツの男の人が掴んでいる手を離した。


「こいつ従妹なんです。最近この辺に引っ越してきたばっかで、道に迷ったらしくて」


「従妹?あっ、マジで?ごめんね従妹ちゃん」


なぜか従妹と言われ、黒スーツの人には謝られ、複雑な気持ちになりながらも軽く頭を下げる。


「じゃあ今日は帰っていいよ。その子一人で帰すわけにも行かないだろ」


「すいません、お疲れ様でした」


その場で急遽帰ることになった先輩が私の手を引いて歩き出す。


先輩に引っ張られながらも、もう一度黒スーツの人に頭を下げて先輩の後について行く。


どこに向かってるんだろう。


初めて通る真っ暗な道を無言でしばらく歩いて行くと、ある一つのベンチに腰を下ろした。


掴んでいた先輩の手が離れてしまったことに少し寂しくなり、掴まれていた部分を恋しそうに眺めていると、真夜中の広場に先輩の声が響いた。