怪しまれないように冷静を保って自然な感じでお店の中を覗いてみるが


「ん?新人?」


あっけなく近くにいた黒スーツの男の人に声をかけられ、恐る恐る振り返る。


「あ、あの…ここに須賀って人、いますか?」


「須賀?あぁ〜須賀の紹介か!こういう仕事初めて?緊張しなくても大丈夫だから。ほら、中まで案内するよ」


「…えっ、いや…!ちがっ…」


やっぱり那月の言っていた通り、たまにニュースで見る怪しい違法営業のお店なんだ!


「ちょっ…!離してっ…」


腕を掴んだまま中へ連れて行こうとする男の人を払いのけるように抵抗してみるが、男の力に勝てるはずもなく、もうダメだと諦めて泣きそうになりかけたそのとき


「ふ、き…?」


一瞬だけ聞こえたあの人の声。


実物か確かめるように後ろを振り返る。


「やっと、会えた…ぁ…」


「…何でここにいんの?」


泣きそうな私と、その私の腕を掴んで店の中へ連れて行こうとしていた男の人。


いまいち理解できないこの光景を、先輩はただただ見つめることしかできなかった。