「ママ!あの…急遽、亜子の家でお泊まりすることになったから…行って来るね!!」


リビングでテレビを見ているママに話しかける。


「今から?遅いけど大丈夫なの?行くなら夜道は危ないからママが送るわ」


「あああ…!もう外にいるの!待たせてるから行くねっ」


「え、大丈夫なの〜?…ちょっ、それも持って行くの?!食べたかったのに…」


心の中で謝りつつ、テーブルに置いていた袋と冷蔵庫に入れていたケーキの箱を持って家を出る。


そして那月に教えてもらった場所を頼りにいつもと逆方向の慣れない道を走って行く。


街灯の少ない住宅街を抜けて少し進むと、さっきとは真逆の明るさに深夜にも関わらずたくさんの人で賑わう街へ出た。


「うわ…あっすいません!」


眩しいほどキラキラしている建物を見渡していると派手な格好をした女の人たちと軽くぶつかってしまう。


自分には無縁だと思っていた夜の街を内心怯えながら一人で歩いていく。


携帯を手に取り、那月に教えてもらったお店の名前と交互に確認しながら歩いていると、あるお店が目に映った。


「…あれだ」