すぐにこの地の司祭を呼ぶこととなり、城代は手配のために部屋から出ていこうと扉の取っ手を掴んだ。

「――わっ……!」
 
 マチューが取っ手を掴んだ途端にスポッと抜けた。
 
 ポカンと取れた金細工の取っ手を凝視していたマチューめがけて、今度は扉が勢いよく開き、ソニア達は驚いて尻餅をついたマチューに走り寄る。
 
 思いっきり顔面を強打したマチューは、鼻血を出して悶えていた。

「大丈夫ですか? 城代」
 
 クリスが扉から庇うように立ちはだかると、また扉が勝手に開閉を始めた。

「クリス様! 危ない!」
 
 今度は更に弾みを付けた扉が、まるで意思ある武器のように素早くクリスの背に向かう。
 
 ――が
 
 バキッ! と扉が破損した。
 
 厚みのある立派な一枚板の扉は、クリスの頭突きで木っ端微塵となったのだ。

「戦の猛者の私が、板切れごときにやられるとでも思ったか!」
 
 高らかな笑いとともに、クリスの自信溢れた台詞が部屋中に響く。
 
 だが、それに答える声や人影は現れることはなかった。

「……とりあえず、この扉の代金は私宛に請求してください」

「いえ……それは」
 
 クリスの謝罪に、ソニアが我に返り断ろうと途中まで言ってはた、と口に手を当てる。