「フフフフ……!」
 
 ようやく破ったのはソニアの笑い声だった。

「やはり、笑いますよね……。子供の時の願望を持ち出して……」
 
 大きな体躯でしょぼんと肩を落とすクリスの姿を見て、ソニアは彼を初めて可愛いと思った。

「クリス様って可愛らしい!」
「からかわないで下さい。……秘密ですぞ? 王や王妃にも、誰にも言わないでくださいよ?」
「分かりました、秘密にします。――でも、そんな可愛いエピソードを黙っているなんて勿体ないです」
「――だ、駄目です! いけません!  絶対に話さないでくださいよ!」
 
 狭い馬車内で中腰に立ち上がり、真っ赤になって慌てるクリスを見てソニアは、これから恐ろしい相手と対面することを忘れて笑った。