「……僕だって」
 
 ボツりと――セヴランが呟いた。
 
 床に尻を付いて殴られた頬を擦る姿は、叱られて拗ねているように見える。

「僕だって、被害者だ……酷い目にあったのに……僕のせいじゃないのに……」
 
 ぶち――とクリスは、自分の血管の切れた音を聞いた気がした。

「王、王妃!  お叱り覚悟!」
「――ああ、構わん」
「やっちゃって」
 
 二人の承諾の刹那、クリスの足が豪音をあげてセヴランの背中に当たった。
 
 ふごっ! と言う奇妙な声を出しセヴランの身体が一メートル程、先に飛ぶ。
 
 うつ伏せで呻いている彼にクリスは
「ソニア様の件が片付いたら鍛え直し致します。逃げても、どこまでも追いかけていきますぞ!  地下牢に閉じ込めても鍛え直しますからな! 絶対鍛え直ししますぞ!」
 
 大事なことだから三回も言いましたから、と一言付け加え王妃を連れて部屋を出ていった。