頭の芯が痺れ、蕩けてしまいそうだった。
 伏せられた長い睫毛と熱い吐息。その熱が蘇り顔から湯気が出そうな程全身が熱を持つ。もはやスズランの思考力は役に立たない。

「ちょっと大丈夫なの!?」

「へ、へいきだよ…」

「そうは見えないけど」

 ありありと浮かぶ頭の中の情景を追い出そうと思い切り首を左右に振ったが、全く効果がない。スズランは真っ赤に染まる頬を両手で覆い隠した。

「〜〜っ」

「彼の事好き?」

「…!」

 なんとも直球な質問を投げかけられた。
 もう誤魔化せない。
 そう。ライアの事が、好きなのだ……。
 しかし先程自覚したばかりの感情に素直に頷く事が出来なかった。おまけに嫌われている。しかしソニャはこの沈黙を肯定と取ったらしい。

「……アタシとしてはさぁ、二人を応援したい所なんだけど今日の事は流石に早計だと思うの。特に相手の同意も取らずにキスなんてほっぺでもダメ絶対! それに、スズの事をちゃんと理解してくれる人でないと! まあ大事なのはスズの気持ちだし今日はゆっくり考えなよ。アタシの貸した小説でも読んでさ!」

 ソニャの明るい態度と声に励まされる。今のスズランにとっては、涙が出るほど有難かった。