しかもそれを受けるには高額な費用が掛かるという事も。

「お前さ……なんで俺にだけそんな冷たいの? 俺、何かした? 礼ならいらないから教えてよ」

 治療費を請求されるのかと思っていたが、ライアの言葉はスズランの意表をついた。やはり本人に気づかれてしまう程、露骨に避けすぎたのだ。罪悪感が残る中苦しい言い訳を試みる。

「だ、だって、セィシェルが……あなたに近づいたらだめって。あぶないから……」

 そう口にして後悔した。何故ならライアが一瞬、酷く悲しそうな表情を見せたからだ。だが、直ぐに呆れた様な顔つきになり一旦視線を横に流すと今度は正面から瞳を覗かれた。

「……危ないって、どんな風に?」

「え?」

 一度その瞳に捉えられると不思議と逸らせなくなる。何もかも暴く様な強い眼差しから逃げられず、一心に瞳の奥の感情を探る。
 そうしているうちにライアの親指がスズランの唇に触れた。

「例えば、こうとか?」

 そのまま親指で唇をなぞられるがスズランは金縛りにあったかの如く動けなかった。
 何処か戸惑った表情で真っ直ぐに見つめてくるライア。同じく見つめ返す事しか出来ない。

 それは、まるで時が止まった様だった。