「はっ!? あらヤダ、あたしったら今何を…?」

 セィシェルの声に我に返ったエリィは漸くスズランを解放した。

「はあっ…びっくりした!」

 やっと自由の身になったスズランだが未だエリィとセィシェルの間に挟まれていた。
 セィシェルは眉を釣りあげ、垂れ目がちな目尻をきっと上げてエリィを睨みつけている。

「おいアンタ。アンタが何者かは知らねえけど、いくら女でもスズに近づく奴は容赦はしないぜ?」

「セィシェルまって! この方は具合いが…!」

「ま、待って頂戴。そうじゃあなくて、あたし今ホント切羽詰まってて…! 代金は必ずお支払いするわ、何でも良いから食べ物を頂けると助か…る…」

 そこまで言うとエリィはへたへたとその場に倒れ込み、今度こそばたりと床の上に突っ伏した。

「きゃあ! 大丈夫ですか!? セィシェルどうしよう」

「はああ? どうしようって。と、とりあえず何か飯を…」

 セィシェルと二人でおろおろしているとエリィが小さく呻いた。

「……は…ん」

「あ? 何か言ったか?」

 セィシェルが近づくと、床に這ったまま顔だけ起こし重そうに顔にかかった前髪の隙間から恐ろしいまでの気迫を込めて見上げてくるエリィ。