ソニャはそんなスズランを見てやれやれと話を続けた。

「じゃあ。スズはあの彼が毎晩店に通って来てるの何でか知ってる?」

「……そんなのわかんない」

 何故かなど考えた事がなかった。思えばもう半月、ほぼ毎日店に来ている。若しくはエリィと約束をしてこの店で会っているとしか思えないが。

「はぁぁ。あの情熱的な瞳に気づかないなんて罪ね」

「!?」

「彼はねぇ、毎日スズに会いに…」

「おいソニャ! スズに余計な話するな!」

 ソニャの言葉を遮る様な大声を上げてセィシェルが倉庫から戻ってきた。

「うわ出たなお邪魔虫!」

「あ? 何か言ったか? 暇ってんなら今日はお前が呼び込み行って来てもいーんだぜ?」

「何それ、パワハラなんですけどー!」

「何がパワハラだコラ! ソニャがスズに余計な事吹き込むからだろ」

「はあ? あんたが初々しい二人の邪魔をしてるからじゃん! 毎回陰で何かしてんの知ってるんだからね」

「初々しいって…。スズはともかく、あの変態野郎は絶対ちげぇだろ! 先週だってまた花街の女どもを侍らせてたじゃあねぇか! もう何度目だよ。とにかくあの野郎には迷惑してんだ!」

「ふ、二人ともケンカしないで…!」