だがセィシェルは客の呼び込みで店の外におり、ソニャは休憩中。店内で動けるのはスズランのみである。

「ど、どうしよう……でも、今わたししかいないし…っ」

「まあ、スズランちゃん! こんばんは。お酒とお料理を追加したいのだけど、注文いいかしら?」

「こんばんは。エリィさん…!」

 まごついていると早速エリィに見つかり手招きされる。スズランは恐る恐るエリィ達のいる奥の席に近づいた。なるべくライアと瞳を合わせない様に伏し目がちで挨拶を交わす。
 エリィも相当な美女だが、この女性陣の美貌たるやかなりの傑物揃いだ。同性から見ても魅惑的で各々の色香に圧倒されてしまいそうになる。

「スズランちゃん今日も頑張っているのね! たくさん注文するからよろしくね」

「あ、はい…」

「あら、この可愛い子エリィの知り合いなの?」

「ええ。ピンチの時に助けてもらってね。あたしの恩人の一人よ、ね? スズランちゃん」

「そんな! わたしは何も…!」

「うふふ、この初心(うぶ)な感じがキュートでしょう?」

 エリィの問いに女性陣が賛同と賞賛の声をあげる。そのかしましさと勢いに気圧されてスズランは目を白黒とさせた。

「───あ、注文いい?」