「わーお、あのイケメンてばさっすがぁ! 今日は美女一人じゃあ飽き足らず何人も従えてんじゃん」

「ソニャちゃん…!」

 奥の席でエリィたちに囲まれているライアを見つけたソニャが口角を上げて意味ありげに微笑む。

「スズはあーいうのをなんて言うか知ってる?」

「えぇっと…?」

 一応考えを廻らせてみたが、やはりスズランには分からず素直に首を横に振る。

「まさに……ジ・ゴ・ロ!」

「じごろ…?」

「そう! もしくはスケコマシね!!」

「……すけ、こま?」

「あーんもう、スズったら! アタシの貸した本ちゃんと読んでる?」

「うん、まだちょっとだけど…」

「早く読み進めてみて〜! 丁度あんな感じのイケメンジゴロが出て来てさ、女の子たちは次々とそいつの罠にハマって行くのよ! それでね…」

「おいソニャ! スズに変な事教え込むなって! 真面目に仕事しろよ」

 倉庫から酒瓶を持って現れたセィシェルが二人の会話に水を差す。

「イイじゃん! 今日はお客さん少なくてヒマなんだもの」

「暇とか言うな!」

「何よ。本当にヒマなんだから仕方ないでしょう? だったらアンタが表に出て呼び込みでもして来てよね」